木造住宅倒壊のメカニズム
筋交いが多い建物でも土台と柱の接合部が弱いと、地震の揺れによって柱が引き抜かれ倒壊してしまいます。
また壁の配置のバランスが悪いと振り子の原理と同じで、建物が大きく揺さぶられ、壁の弱い部分から壊れ、建物が崩れてしまいます。
建物のねじれやすさや耐力壁となる壁が少ないと倒壊の危険性が高まりますので、耐力壁の配置の見直しや増設、柱の引抜けを抑えるホールダウン金物の取付等により大幅に耐震性を高めることが出来ます。
木造住宅の耐震性能の変遷
昭和56年5月31日以前の建物 ・・・接合金物(釘留め)が弱く、筋交も細く設置されている量も少ない。また無筋基礎もしくは鉄筋量が少ない為、基礎強度が弱い。 壁自体も和室(真壁)が多く、耐力壁以外でも耐力を期待できる壁が圧倒的に少ない。
※耐力壁とは一般的に筋交の入った壁のことをいいます。
昭和56年6月以降から平成12年5月31日以前の建物 ・・・昭和53年宮城県沖地震で木造住宅が甚大な被害を受けたのをきっかけに、設計基準の見直しが行われ、布基礎に鉄筋を入れる事が多くなり筋交いの量も大幅に増やされました(以前の約1.5倍)。
その後、阪神淡路大震災が起こり想定外の被害が出た為、再度見直しがされます。
平成12年6月1日以降 ・・・今の現行の耐震基準となります。阪神淡路大震災時に於ける柱の引きぬけによる倒壊事例をもとに、基礎から柱を緊結するホールダウン金物の設置や架構への仕口接合金物の規定、耐力壁や配置バランスの規定など大幅な改訂が行なわれました。
※その他、地震による倒壊した建物の状況としては、腐食や白蟻により耐力不足となっていたものや、古い家では瓦屋根に全壊が多く、比較的新しい家ではバランスの悪い家が2階に押し潰される形で倒壊しています。
精密診断の考え
建物の剛心が中心となり重心が振り子になり、地震動に対して建物がねじれがおこります。この結果、振れ幅が大きければ大きいほど柱が引抜け倒壊の危険性が高まります。剛心と重心が近ければ近いほどねじれは小さくなります。
上記のことから建物のバランスが悪ければ、きちんと計算して補強箇所を絞らなければ、むやみに耐力壁や柱の引抜きに対する検討を増やす結果となり、無駄に多くの工事費用が発生してしまいます。いかに安価に耐震補強を行なえるかを考えた場合、補強箇所を特定するには精密診断が必要となります。
以上、他にも検討要素はいろいろありますが、精密診断に対する考えがお分かりいただけたでしょうか。
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